個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
平成15年に個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであること、その他の個人情報の有用性に配慮しつつ個人の権利利益を保護することを目的に制定されたもの。個人情報が5000人以下の小規模事業者は適用対象外であったが、平成27年に改正され個人情報を取り扱うすべての事業者が規制の対象となる(組合員名簿等を作成管理する全て管理組合が規制の対象となった)。個人情報とは生存する個人に関する情報であり、その情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)。
管理組合に適用される個人情報保護法
個人情報保護法の第4章「個人情報取扱事業者の義務」が主に管理組合に適用される。
第15条 利用目的の特定
個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
第16条 利用目的による制限
あらかじめ本人の同意を得ないで、特定されて利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
第17条 適正な取得
偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。原則としてあらかじめ本人の同意を得ないで、本人の人種、信条、病歴など、本人に対する不当な差別又は偏見が生じる可能性の個人情報(要配慮個人情報)を取得してはならない。要援護者名簿の作成などは、原則として本人の申出に基づき作成されるのが基本。
第18条 取得に際しての利用目的の通知等
個人情報を取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。予め個人情報の利用目的を公表しておくことが、円滑な組合運営として望ましい。
第19条 デ-タ内容の正確性の確保
利用目的の達成に必要な範囲内において、個人デ-タを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは当該個人デ-タを遅滞なく消去するように努めなければならない。不要な情報は速やかに削除し、漏えいなどの個人の権利利益の侵害を未然に防止する。
第20条 安全管理措置
その取り扱う個人デ-タの漏洩、滅失又は棄損の防止その他の個人デ-タの安全管理のために必要かつ適正な措置を講じなければならない。
第23条 第三者提供の制限
あらかじめ本人の同意を得ないで(法令に基づく場合や例外とされる場合を除く)、個人デ-タを第三者に提供してはならない。個人情報を取得する際に、第三者提供について本人の同意を得ておくことが望ましい。
第28条 開示
本人は当該本人が識別される保有個人デ-タの開示を請求することができる。請求を受けた場合は遅滞なく、当該保有個人デ-タを開示しなければならない。本人から当該本人の個人情報の開示を請求された場合、応じなければならない。
名簿の種類
名簿の利用目的
各種名簿を作成・利用するにあたり、管理組合は、名簿の利用目的をあらかじめ特定し、情報取得の際には、本人への通知、見やすい場所への掲示、規約や使用細則等に記載して各戸に配布する等の措置を講じるとともに、名簿の取扱いは、この特定された利用目的の達成に必要な範囲内に止めることが望ましい。
名簿の管理
標準管理規約第64条「理事長は、会計帳簿、備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管」と定められており、理事長が責任をもって管理する。個人情報に関しては厳密な管理が求められるので、具体的な管理方法、名簿の取扱者などについて細則に定めておくことが望ましい。実際は名簿の管理を管理会社(管理員)に委託している場合が多いとと思われるので、その場合は管理会社との覚書等で管理方法、責任の所在等を明確にしておくことが望ましい。
名簿の配布
名簿を各組合員に配布する場合は、予め個人情報を取得する際に名簿の配布について本人の同意を得ておくことが必要。
参考 国土交通省の平成30年マンション総合調査結果
名簿について「組合員名簿及び居住者名簿がある」が77.3%、「いずれもない」が6.6%
名簿の閲覧について「閲覧理由が妥当な場合は閲覧できる」が39.3%、「請求があれば閲覧できる」が19.4%、「配布しているので閲覧の必要ない」が4.9%で合計63.6%の管理組合において組合員名簿を確認できる体制。一方、閲覧を認めていない管理組合は32.6%となる。
組合員名簿閲覧請求事件(東京地裁平成29年10月26日判決)
組合員が管理組合に対して管理規約に基づいて組合員名簿の閲覧を請求した事案。総会招集を請求する事が出来る旨の管理規約(組合員総数5分の1以上の同意が要件)に基づき、組合員による総会招集権を行使するため、他の組合員の連絡先を把握する目的で、管理組合に対し組合員名簿の閲覧を請求したもの。総会へ提出予定の議案内容は当該マンションの修繕工事が役員紹介の業者へ随意契約によって発注されており問題あると指摘、工事業者を公開入札によって選定するよう管理規約の改正を提案するもの。
管理組合の対応
組合員名簿の閲覧請求は区分所有法には規定がなく、標準管理規約第64条第1項で認められている。個人情報保護法施行後に制定された一般社団法人第32条第2項が社員による社員名簿の閲覧請求権を認めていることを根拠の1つに、管理規約に規定がない場合でも組合員名簿の閲覧請求に応じる必要があるものと思料される。標準管理規約には閲覧拒否できる場合の規定なし。区分所有法では管理規約や集会議事録の閲覧請求において正当な事由があれば閲覧を拒否できると規定。一般社団法人法第32条第3項が管理規約または民法第645条に基づく閲覧請求権の行使について考慮すべきであり、組合員の閲覧請求が不適切なものと認められる場合は情報開示を拒絶できると思料される。閲覧請求の目的、経緯や組合員名簿の記載内容等、個別の事情によっては、組合員の個人情報保護等を理由に閲覧の範囲を限定すべき場合もあり得ると思料される。
村田マンション管理士事務所 横浜(プロフィ-ル)